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ブラームス 交響曲第1番他 ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管弦楽団


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ブラームスの交響曲第1番は、クラシック音楽でも屈指の人気曲です。
人気投票をおこなうと、一位にランクされることが多いことも、その人気ぶりを物語っていますが、人気にともなう内容を持っていることも無論です。
ブラームスが呻吟を重ね、足掛け20年以上の年月を費やしてようやく完成させたこの交響曲は、長く苦しい旅路と、苦悩との戦い、そして勝利と開放の音楽として、ゆるぎない完成度を持ちえるにいたっています。

ベイヌムはオランダの名指揮者です。
名門コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者を務めましたが、60歳手前で早世。
その早すぎる死は、いまでも痛恨事として語られることが多いですが、その意味も、死の前年の録音であるこのブラームスを聴けば、よく理解できます。

悲劇的な第一楽章の冒頭から裂帛の気合で弾きはじめられます。
気合が空転するような演奏も多いなか、ほんらい柔軟な音を出すのに定評あるコンセルトヘボウ管が、ベイヌムの統率の元、フルトヴェングラー/ベルリンフィルのような、大きく切れ味の鋭いアインザッツを聴かせています。
とはいえ、ドイツ的鈍重さとは無縁で、力強いながらあくまで見通しよく、安定感と推進力もどちらも犠牲にしない絶妙のテンポをつくり出しているのは、驚くほかありません。

第二楽章は聴き手を甘い追憶にひたらせるアンダンテ。
ブラームスが書いたもっともおだやかな【赦し】の音楽のひとつを、オーケストラの暖かな音色を生かしつつ歌いきっています。

第三楽章は、ひとつの楽章というより、むしろ最終楽章の前奏曲のような形で配置され、より速めの足取りでゆきすぎながら、直後に来るであろう激動をも予感させています。

その第四楽章は、冬の大荒れの海のようです。
おだやかにはじめられた音楽が、やがて大きく、熱いうねりを伴って、聴く者の心をあまさず巻きこんでしまうのです。
ホルンによる慰めのコラールは、心にそくそくと迫ってきます。
音楽は重層的に構築され、やがて夜明けを迎え、周到に導かれて【勝利】と【救済】を、力強く、心優しく描いてゆきます。
管弦楽の響きは、聴き手の心のひだに縦横にはいりこみ、慰めと喜びは全身にゆきわたっていきます。
強さにも、歌心にも、推進力にも不足しない稀有なフィナーレ。
足取りは決して重くならないのに、うわついた軽薄さとはいっさい無縁という奇跡のようなバランスを保っています。

ここまで音楽的に豊かで、熱い演奏なのに(特に14:00以降のコーダ)、見通しの良さを失っていないブラームスの1番は、ほかでは見られないものです。

ブラームスの第1番は、複雑な諸相を持つがゆえに、その人気に反して、名演を実現することが際立って困難です。
ベイヌムの遺作ともいえるこの演奏は、同曲の数少ない理想的演奏といえ、惜しまれて早世したこの名指揮者を代表する名盤でもあります。
また、数多くの名演奏・名録音を残してきたコンセルトヘボウ管弦楽団にとっても、ひとつの記念碑的演奏の記録であるように思います。

50年前におこなわれたことが信じられないほど、自然なプレゼンスを有する録音は、いま聴いても新鮮さとリアリティを失っておらず、フィリップスの録音技術の高さをうかがわせます。

とびきり廉価でもありますし、この曲を愛する方には、ぜひともお聴きいただきたい名盤中の名盤です。

(録音 1958年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★★
3 不朽 ★★★★☆
4 買得 ★★★★★
5 必須 ★★★★★


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ブラームス 交響曲全集 カラヤン指揮ベルリン・フィル(1977年)


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ブラームスの交響曲ほど、海のような奥深さを感じさせる音楽があるでしょうか?
夜、静かに一人で音楽を聴こうとするとき、ブラームスをいちばん求めてしまいます。

何度聴いても、自分がいかにこの音楽を浅薄に理解したつもりになっていたのか、を知らされます。
いつ聴いても、飽きることがなく、聴くほどによさをますます味わえるようになる、という点でも、ブラームスほどの作曲家は、私にとってはいません。

長く苦しい旅の、終わりを感じさせる第一番の素晴らしさ。
暖かい心と生命の健やかさを感じさせる、私が最も愛する第二番(ブラームスの『田園』とも呼ばれる)。
おそるべき旋律の美しさと、決然とした推進力を兼備した第三番。
すべての物語に、終幕の鐘を鳴らすかのような、言葉を失うほど美しい黄昏の音楽である、第四番。

カラヤンは、ベートーヴェンやチャイコフスキーも得意としていたが、ブラームスにもっとも体質的な相性のよさを感じさせる指揮者でした。
彼はドイツ・グラモフォン(DG)に三度、全集を録音していますが、この二度目の全集が白眉であり、最良の状態で録音されています。

ベルリンフィルの磨き抜かれた音は、ややメタリックに聞こえてしまうほど輝かしく、もはやヴィルトゥオーゾ(巨匠)の粋に達しているトップ奏者たちの名人芸もそこかしこに聴かれます。

テンポは完璧なバランスで設定され、気品ある美しさと劇性の絶妙なバランス(しかも、そのどちらもが最高に演出されています)を創り出し、ブラームスの音楽のすべての要素を、万全に表現して隙がないものです。

オーケストラの音色は、特にそのフィナーレでは、黄昏の黄金色のように照り映えて、匂うばかりに美しい音の洪水となっています。
カラヤンの指揮が、高貴な悲しみと強靭な意志とを、完全にブラームスの音符と同化して奏で、それをアナログ完成期の録音が、見事に捉えています。

ブラームスの交響曲全集はあまたありますが、全四曲をすべて高い次元で演奏しているものはほとんどありません。
また、柔と剛ともいえる、ブラームスの音楽の両方の特質を、双方ともに十全に表現できている演奏となると、砂丘からダイヤを探り出すような少なさです。

このなかで、柔(言い換えれば、歌)に傾いた名演の最右翼が、バルビローリ/ウィーンフィルと言え、剛に傾いた傑作が、ヴァント/北ドイツ放送響といってもよいかと思えます。

それらの名演ももちろん、捨てておくには惜しいものばかりです。
しかし、この全集に見るカラヤンの指揮と、ブラームスの音楽との同質性は、ほかでは見られないものです。

絶頂期にあったベルリンフィルの凄絶なまでの力演ともあいまって、この録音が神秘的ともいえるほどの完成度に達してるゆえんです。

また、特筆すべきことにこの盤は、二枚組に収められています。
OIBPによるリマスターも成功しているようで、たとえば第一番のフィナーレにおけるホルンのコラールは、空間性を意識させる響きをよく出していて、感動的な名演に華やかな彩りを添えています。

そのお買い得度も含めて、なにを措いても真っ先に聞かれるべき名セットといえるでしょう。

(録音 1977年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★★
3 不朽 ★★★★
4 買得 ★★★★★
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