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シューベルト 即興曲集(作品90、142) ピリス(P)


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シューベルトのピアノ曲でも、最高の輝きを持つ作品。
それが、ここでとりあげる即興曲集でしょう。
シューベルトの音楽は決して声高になることはありません。
それでいながら、その作品を愛するものにとっては、何物にも替えがたい、心の宝のように思えてきます。

私自身、青春時代にこの音楽に触れ、その禁断とも感じられるほど純粋な美しさに、身も心も虜にされた時期がありました。
シューベルトがここで歌っているのは(彼の作品は、たとえピアノであっても、歌う、ということから離れていないと感じるのですが)、至純なもの、純粋なもの、への永遠の憧憬ではないでしょうか。
その意味で、はじめから不可能な世界をピアノで歌っているようにすら思えます。
事実ここで紡がれる旋律が、どれほど心に深く染み込んできても、その美しさゆえに、恐るべき破綻の予兆をつねに感じさせるのが、その証とも思えるのです。

ピリスこそ、シューベルトのそうしたかなわぬ思いを、もっとも清潔な美しさで弾きえているピアニストだと思います。
彼女のピアノは、大げさなコントラストとは無縁で、つねに可憐さを失わず、それでいて芯の強さを併せ持っています。
また、音色のチャーミングな魅力は、この人ならではのものがあって、大柄になりすぎないところなどは、やはり女流ピアニストならではの美点を持っているともいえます。

憧れぬいてやまないのに、けっして到達できない美の世界を、おそるべき深遠さと叙情の世界としてピアノに歌わせたシューベルト。
彼にはピアノソナタの傑作もありますが、ここで聴く即興曲集こそ、もっともその美質が明らかになった作品として称揚されるべぎだと思います。
古今のピアノ作品の中でも群を抜いた美の世界であり、聴いているだけで魂が吸い寄せられてゆきそうな感覚にとらわれる名作群といえます。
私は特に、作品90の第3番を、飛翔する魂の軌跡を描かれているような、不思議な感動とともに聴きます。

録音はグラモフォンが誇る4D方式で、あらゆる点で傷のないすばらしさです。
とくに残響は綺麗にとられており溜息がでるほどです。

唯一無二の傑作といえるこれらの曲集の、特筆すべき名演として、このアルバムを強力に推薦したく思います。

(録音 1996-97年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★★★
3 不朽 ★★★★
4 買得 ★★★
5 必須 ★★★★


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シューベルト | コメント:2 | トラックバック:0 |
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この記事のコメント

こんばんは。

この曲、知りませんでしたが北国タクトさんのこの記事を読んで、CDを買いました。

たまたまピリスのディスクがなかったのでブレンデルで買ってみました。

これから聴いてみます。

ご紹介ありがとうございました。
2008-05-05 Mon 22:08 | URL | ニョッキ #uaIRrcRw[ 編集]
コメントありがとうございます。
シューベルトのピアノ曲を絶賛したのはシューマンでしたね。
彼はシューベルトを、リートなどより、絶対音楽の偉大な作曲家として評価したということです。
(それが『グレイト』発見の興奮にも現れていますよね)
即興曲集は、古今のピアノ曲中でも稀な輝きを持った宝玉ではないでしょうか。
2008-05-08 Thu 10:41 | URL | 北国タクト #dBXh/C6s[ 編集]

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