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シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ムター(vn)&プレヴィン指揮ドレスデン・シュターツカペレ


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ヴァイオリン協奏曲の傑作として、このごろ特に、演奏会で採りあげられることが多いシベリウス。
実演で聴く機会がとても多いのは、この曲の評価が高まってきていることを感じさせます。
チャイコフスキーやベートーヴェンと較べるといささか地味ながら、彼らしいリリシズムと北欧的な詩情、繊細美麗な音楽は、一度聴いたら虜にさせられてしまう魅力を持っているのです。

ここに聴くのは、ムターがプレヴィンと録音したもので、夫であった指揮者と、彼の愛していたドレスデンのオーケストラ(シュターツカペレ、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)が、まさに渾身の音楽体となって、すこぶる充実した演奏を聴かせてくれるものです。

シベリウスの音楽は、私が冒頭に書いたような、リリシズム、あるいはフィンランドの自然を写しこんだような、乾いて冷涼な空気感を持っている、と評されることが多いです。
もちろんそれは事実であって、そのことが、北国生まれの私を強くひきつけるのも事実ながら、その内奥に、たぎるような情熱と、羞恥心によって隠されてしまっているロマンティシズムの根が張られております。
それがいわば重要な複線となって、彼の作品全体を、ただの環境音楽にしないだけの役割を果たしていますし、そこには【秘められたもの】特有の淫靡で禁断めいた香気さえ、ときに感じさせたりもするのです。

ムターのヴァイオリン演奏は、まさにこのコンチェルトの本質を衝いています。
冷涼で凛とした演奏をすれば、見かけはシベリウスらしいものが出来上がってきますから、そうした奏者に、実演で出会うことも多いわけですが、そのときに感じてしまう物足りなさは、前述の【秘められたる魂】への配慮のなさ、に起因するとも思うのです。

ムターの豊潤で熱気に満ちたヴァイオリンを、シベリウスらしくない、と言い切ってしまうのは、ですから誤謬であって、むしろこの曲の名盤といわれる、ハイフェッツ、チョン・キョンファらも、やはり抑えきれぬほど烈しい感情の疾走によって演奏を形作っていたものでした。

第一楽章14:30からのムターの凄絶ともいえる音楽と、それを盛り立てるプレヴィンのオーケストラとの絶妙すぎるほどの呼吸は、私が他のいかなる演奏にも求めて得られなかっただけのものですし、いってみれば度肝を抜かれるという表現に行き着くだけのエネルギーがあります。

第二楽章はむしろオーケストラの華麗ですが精細であるという素晴らしい音色が聴かれ、ムターの慈しむように歌うヴァイオリンと絡み合って、この世ならぬ桃源郷の美しさを表現するかのように陶酔的で、幻想的です。

第三楽章では、例の舞曲的テンポに乗って、魂が駆けてゆくような興趣であって、いささか前半の二楽章に比して出来栄えは劣る音楽ながら(それはシベリウスの筆の問題です)、そうした瑕をいっさい感じさせない完全なエンペラースタイルに仕上げていて、技術も、音楽も、情熱も、すべてが充実の極みで、感動的な終末にたどり着くまで、聴き手の心を惹きつけて離しません。

録音もドイツ・グラモフォンの誇る4Dシステムを代表する秀抜さで、これだけのクオリティで収録された名演・名曲はそう多くはないでしょう。弦の弾かれた音のリアリティ、オケの質感、シベリウスらしい広大な空間の表出が見事で、このレーベル屈指のものです。

結果として、価格はやや張りますが、この傑作協奏曲を代表し、またムターを代表するディスクとして、強力に推薦したいと思います。
また、シベリウスを知る上でも、けっして欠かすことのできない名盤であると確信します。
併録されているセレナーデも可憐な名曲で、一聴の価値がありますのでぜひ聴いてみてください。

(録音 1995年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★★★
3 不朽 ★★★★★
4 買得 ★★☆
5 必須 ★★★★★


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シシュ ヴァイオリンコンサート(第四銀行株主限定) 2008/7/17於りゅーとぴあ

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☆プログラム☆
クライスラー プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
ラフマニノフ ヴォカリーズ
サン・サーンス 序奏とロンド・カプリチオーソ
クライスラー 愛の悲しみ 愛の喜び
サラサーテ ツィゴイネルワイゼン
フランク ヴァイオリンソナタ
(伴奏P 中島由紀)

第四銀行株主限定ということで、上記のコンサートに行ってまいりました。
マリナ・シシュはフランスの若手ヴァイオリニスト。入りは8割ほど。
まだ27歳ということで、私よりも年下です。オイストラフの孫弟子にあたるそうです。
まったく期待せずに行ったコンサートでしたが、思わぬ拾い物をした気分になりました。

音色は豊潤で、ムターの若い時分を見るような趣もあり、そこにいかにもフランス的猫気質な(というべきでしょうか)気まぐれな気高さを見せていて、きわめて魅力的な奏者でした。
テクニックはまだ未完成な部分も散見され、演劇的にいうなら「発声の子音がときに甘い」ように聴こえる箇所もありましたが、それを補ってあまりある馥郁たる音楽を奏でていて、またその弾き姿も美しく(プログラムの写真よりもずっと)、こんなによいヴァイオリンリサイタルは久しぶりでした。

なかでも内容が充実していたのは『クライスラー プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ』で、気品ある音色と、曲との同質性を如実に感じさせる燃焼度の高い音楽で、期待していなかった私をも、一気に自分の世界に引きずり込んでくれたと思います。

ただ、サラサーテでは、伴奏の中島女史との息がいまいちあっておらず、そのせいか技術的ほころびも数箇所聴かれたのは残念でした。
また、後半に置かれた、フランクのソナタは、私がこの曲をいまだに魅力的と思えないため、今回聴いても、どうにも手応えのなさが残る結果とはなりましたが、これは私(聴き手)の問題ですから仕方ないことでしょう。
うちの嫁さんも、ばらばらの小品を繋ぎ合わせたみたいなソナタ、といっておりましたから、私だけの感想でもないとは思うのですが。

ともあれ、全体にはとても上質のコンサートで、また心配していた聴衆マナーも比較的よく(フランクの途中で一度拍手はありましたが)、存分に楽しめました。
すぐれた奏者だと思いますし、これからまだまだ伸びそうです。
シシュは機会があればまた聴きたいですね。

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