ベートーヴェン ピアノソナタ第28番『ドロテア・セシリア』&第29番『ハンマークラヴィーア』 ギレリス(P)2008-05-16 Fri 21:00
![]() ↑HMVのサイトに飛びます ベートーヴェンのピアノソナタには名演の系譜があります。 いわゆる独奥系のピアニストを中心とした連綿たる流れですが、たとえばこれが、フィッシャー、バックハウス、ケンプ、グルダ、アラウ(南米)と来て、20世紀の後半にはギレリス(ソ連)の円熟期を迎えました。 ここに聴く2曲は、早世によって完成間近で未完に終わった、ギレリスのベートーヴェン・ピアノソナタ全集から、もっとも濃いエキスを搾ったものといえます。 『月光』や『熱情』といった表題つきの曲ばかりが話題として先行しがちなベートーヴェンのピアノソナタですが、真に偉大なのは28番以降の最晩年の作だと思います。 その中でも28番と29番は、まさに好対照とも言えるコントラストの差を見せてすこぶる印象的ですし、当アルバムの意図もそこにありそうです。 ソ連から西側に衝撃的にデビューした当時、【鋼鉄のピアニスト】なる異名を奉られたギレリスの、ある意味ではハードボイルドなイメージに、もっともそぐわないのが、28番でしょう。 ベートーヴェンの音楽の真髄は、その無限の優しさ、慈愛の心にあると、私などは思うのですが、それを正しいとすると、このピアノソナタこそ、そうしたベートーヴェンの深奥を、もっともよく現した作品だといえます。 だからこそ【鋼鉄のピアニスト】たるギレリスとは、アンマッチな思いがするのですが、実際にここで聴く彼のピアノは、彼本来の厳しさと慈しみが極上の調和を見せている音楽なのです。 あいまいさや弱さは微塵も感じられないのに、すべてのフレーズはことごとくみずみずしい潤いに彩られ、味わいの深さはたとえようもありません。 ひるがえって29番の『ハンマークラヴィーア』は、ベートーヴェンに限らず、すべてのピアノソナタの歴史を紐解いてみても特別の地位を占める傑作であり、飛びぬけた大曲です。 これはギレリス最晩年の演奏なのですが、聴くほどに感銘を受ける、まさにベートーヴェンの奥義を極めた音楽家の手になる演奏で、知情意がパーフェクトなバランスを保って音楽に現れています。 きわめて高度のテクニックが、見せかけの効果やひけらかしには目もくれず、ベートーヴェンの音楽の偉大さにのみ奉仕することの意味を、我々に教えてくれるのです。 ここではギレリスの、飛びぬけてすぐれた技量が、大曲のそこかしこで、ベートーヴェンの意志の強靭さを際立たせる効果をあげています。 それがきわめて印象的で、あるいはこの録音こそ、偉大なピアニストが最晩年に到達しえた孤高の境地を端的に示すものかもしれません。 いうまでもなく、『ハンマークラヴィーア』は凡庸な弾き手には、音楽的な演奏をすることすら困難な難曲でありますが、ギレリスの超人的ともいえる(しかもストイックに抑制された)ピアニスティックな冴えは、むしろこの曲を、愉悦に充ちた表情で弾ききっています。 たとえば、瞑想的な美しさのアダージョのすばらしさは、筆舌に尽くしがたいものですし、深遠なラルゴは聴くものを深い沈黙と感銘にいざないます。 録音は、11年の年代の差を感じないほど自然なプレゼンスで、時代が変わろうとも一貫して揺るぎない、グラモフォンのポリシーを見る思いがします。 疑いなく偉大なピアニストであったギレリスの遺功を偲ぶものとして、またベートーヴェンのピアノソナタの演奏史上においても特筆すべき成果として、本アルバムを強力に推薦します。 898円というバーゲン・プライス中ですから、迷わずお買い求め下さい。 (録音 1972、1983年) DISC Recommend 1 演奏 ★★★★☆ 2 録音 ★★★★ 3 不朽 ★★★★ 4 買得 ★★★★★ 5 必須 ★★★★ ![]() ↑あなたもいますぐこの名盤をゲットできます! HMVでクラシック クラシック人気blogランキング♪ |
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