CLASSIC音楽 不朽の名盤 バイヤーズガイド☆クラシックの名盤・廉価盤情報サイト☆

クラシック音楽CDから、不朽の名盤(&廉価盤)にふさわしいものを点数付で紹介してゆくブログです。初心者の方も歓迎です。新潟でのコンサートレビューもあります

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番『革命』 ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル


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これはソ連の名指揮者、ムラヴィンスキーとレニングラードフィルによる日本公演でのライヴ録音で、おなじ会場で6年後に収録されたバーンスタイン盤と並び立つ名盤です。

序奏からすさまじい緊張感が全体を覆い、悲劇的な色合いですべてを染め尽くしてしまうような演奏です。
音色重視ではなく、たとえば金管など、かならずしも美的とはいえない響きが聴かれる箇所もありますが、その音楽の厳しさは無類で、またこの作品の場合、それが致命的な傷にはなっていないようです。
それよりも、ぴんと張り詰めて伸びきったヴァイオリンや、冴え冴えとしたリズム隊の活躍こそ見事で、瞬きすら忘れて聴き入ってしまうほどです(特に第一楽章8:00〜9:30)。
バーンスタインに見られた楽天性(というより漸進性といえそうですが)など、薬にもしたくないような、極度にシリアスな音楽は、この指揮者の真骨頂でしょう。

第二楽章のシニカルなニュアンスは四角四面すぎて、バーンスタイン盤の味わいを超えていないかもしれませんが、このオーケストラの驚異的なアンサンブルの精度を示していて注目に値します。

第三楽章は人間的な悲しみというより、無常観にこそ近いような深遠かつ透徹した世界の音楽としており、聴きながら戦慄を禁じえないだけのものがあります。
いわばマーラーの『大地の歌』の最終楽章『告別』の後に来る音楽、とでも言うべき究極の諦念の芸術と化していて、死や闇といった概念さえ超えてくる。それは壮絶なほどに美しくやるせない音楽です。

最終楽章は勇壮果敢なクライマックスを築いていて他を圧倒します。
最高度の練達を発揮している合奏精度、曲芸すれすれの殺人的快速テンポは聴き手を興奮の坩堝に落としこむようです。
しかもその興奮を、糖分ゼロとでも形容すべきウルトラビターな手触りのままま表出しきっていて、唖然とするほかありません。
全盛期にあったらしいこの指揮者とヴィルトゥオーゾ・オーケストラの目もくらむばかりの底力を見せ付けられている思いがいたします。

また、ここでの音質は、とにかく録音の質に恵まれないこのカリスマ指揮者の、最良の姿を捉えたものとして評価できます。ややヒスノイズが聴かれるとはいえ、通常の環境においては良好な録音で、過不足なくリアルな領域に達しています。

1000円セール中ですから、この機会を逃さずご入手ください。

この6年後に、バーンスタインの名演が、同じ場所で行われることになります。
いずれも圧倒的な名演です。

なお、このCDはジャケットが凄くかっこいいですね。
これは新潟港に降り立つムラヴィンスキーの姿らしいですが(飛行機嫌いの彼はシベリア鉄道〜海路で日本に来た)、新潟市民必携のアルバムといえるでしょう(^^)

(録音 1973年)

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1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★
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現代音楽 | コメント:2 | トラックバック:0 |

マーラー演奏 バーンスタイン以前と以降

バーンスタインが、彼の芸術を愛するかどうかはともかく、マーラー演奏史におけるメルクマールであったことは、多くの方が認めるところでしょう。
いわばマーラー演奏というのは、バーンスタイン以前と以降に分かれるといってもいいわけで、あらゆる角度から検証して、他には替えがたい存在感を持っていたことはたしかです。
それでは、バーンスタインの死後、マーラーの録音に収穫がなかったのかというと、それは違いますよね。
来週は、そうした状況を踏まえて、バーンスタインの死後に出されたもので、私がもっとも重要と思うディスクを3枚、紹介したいと思います。
さて、どの録音、どの指揮者でしょうか?
皆さんの意見もお聞かせください。


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マーラー 交響曲第1番『巨人』 ワルター指揮コロンビア交響楽団


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マーラーの交響曲第1番『巨人』は、青春の音楽である。
作曲家が28歳で書いた作品だから、というだけではなく、その内容の感じ易さ、激しやすさ、勇ましさ、将来へのぬぐえぬ不安、どれをとっても青い炎が燃え盛るのが見えるような音楽なのです。

マーラーは、いくつかの習作のあと、この『巨人』を書きました(このタイトルは、現在、作品の内容と関係ないものです)。
第1番のシンフォニーとしての完成度は、とても高くて、これに匹敵する第1番は、ブラームスしかないくらいです。
書法はすでに鍛錬の必要がないほど磨かれていますし、個性の証が作品中にちらばめられて、そのまぶしさにはめまいがするほどです。
青葉の吹き出るような第一楽章のみずみずしさ、うきたつ心を抑えられない第二楽章のときめき。
将来へのおののきをこめられた第三楽章は、すでに晩年のテーマの萌芽をすべて聴き取れるほどグロテスクです。
そして、勝利と歓喜の爆発である第四楽章。
マーラーの作品中、もっとも古典的均整のとれた交響曲でありながら、感情の振幅は、彼以前の作曲家の常識をはるかに超えているのです。

ベルリン生まれの名指揮者、ブルーノ・ワルターがマーラーの弟子だったことはよく知られています。
マーラーは生前、作曲家としてより、むしろ世界最高の指揮者として名声を得ていましたが、そのアシスタントとして頭角を現してきたのが、まさにワルターその人でした。
マーラーの死後に交響曲第9番や『大地の歌』の初演をおこなったのは、ほかならぬワルターでした。
彼以外にも名指揮者クレンペラーがマーラーの薫陶を受け、メンゲルベルクもまた作曲家から信頼されていましたが、生涯の親友といってよかったのは、ワルターただ一人だったといいます。
ワルターはユダヤ人でしたから、ナチスドイツの台頭に身の危険を感じ、逃亡と亡命を重ね、ついにはアメリカに至ります。
戦後も活躍を続け、いったん引退した彼に、専属のオーケストラによる、主要なレパートリーのステレオ録音計画が持ち上がりました。
この専属オーケストラが、コロンビア交響楽団と名づけられた団体です。
ワルターは、最長でも一日に二時間という約束で、ふたたび録音を開始します。
それは、なんという孤独な芸術の精華だったのでしょうか。
故郷を追われ、悲劇により娘夫婦も失って、たどりついた異郷の地で、彼は名演を残したのです。
それが、名高いベートーヴェンの『田園』やブラームスの『第四番』、シューベルトの『グレイト』といった録音です。

そして、彼の死の前年に録音されたのが、このマーラーでした。
じつにワルター翁85歳。
ですが、これが老人の音楽でしょうか?
あくまで音楽は生き生きと躍動し、純粋さを微塵も失っていません。
驚異的な若々しさなのに、細部まで意が尽くされ、万全の出来栄えです。
身振りの大きいバーンスタイン盤(コンセルトヘボウも、ニューヨークも)も名盤ですが、むしろそれらよりスケールの大きさで勝っていると思わせるのは、真に偉大な、ワルターという指揮者のすごさでしょうか。
バーンスタインのような没入的指揮ではありません。というより、慈愛に満ちた理性で、師の音楽を、すみずみまで再現し、普遍的な感動にまで高めています。
この録音をおこないながら、ワルターの胸中には、どんな感情が去来していたのでしょうか?
まさに歴史の証人でもあった、ひとりの偉大な音楽家の人生を、この録音に聴くように思うのは、私だけではないでしょう。

それはマーラーの人生を、聴く思いでもあるのでした。
私は、彼の第9交響曲を聴いたあとこそ、この第1番『巨人』を聴き返したくなります。
かならずしも幸福ではなかったマーラーという人間の、彼の長い旅のはじまりと、その終焉が、そこには見えるようです。

録音はステレオ初期のものとしては上質です。
リマスタリングのたびに音がよくなっていますが、とくに低音の響きは特筆すべきものがあります。
ただ左右の分離はいまいちで、これは年代を考えるとやむなしですが、それでも充分に好ましい音であると感じられます。
CDのバージョンによって音がかなり変わりますから、なるべく最新のものをお求め下さい。

(録音 1961年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★☆
3 不朽 ★★★★★
4 買得 ★★★
5 必須 ★★★★★


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マーラー | コメント:4 | トラックバック:0 |

ベートーヴェン ピアノソナタ第28番『ドロテア・セシリア』&第29番『ハンマークラヴィーア』 ギレリス(P)


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ベートーヴェンのピアノソナタには名演の系譜があります。
いわゆる独奥系のピアニストを中心とした連綿たる流れですが、たとえばこれが、フィッシャー、バックハウス、ケンプ、グルダ、アラウ(南米)と来て、20世紀の後半にはギレリス(ソ連)の円熟期を迎えました。
ここに聴く2曲は、早世によって完成間近で未完に終わった、ギレリスのベートーヴェン・ピアノソナタ全集から、もっとも濃いエキスを搾ったものといえます。

『月光』や『熱情』といった表題つきの曲ばかりが話題として先行しがちなベートーヴェンのピアノソナタですが、真に偉大なのは28番以降の最晩年の作だと思います。
その中でも28番と29番は、まさに好対照とも言えるコントラストの差を見せてすこぶる印象的ですし、当アルバムの意図もそこにありそうです。

ソ連から西側に衝撃的にデビューした当時、【鋼鉄のピアニスト】なる異名を奉られたギレリスの、ある意味ではハードボイルドなイメージに、もっともそぐわないのが、28番でしょう。
ベートーヴェンの音楽の真髄は、その無限の優しさ、慈愛の心にあると、私などは思うのですが、それを正しいとすると、このピアノソナタこそ、そうしたベートーヴェンの深奥を、もっともよく現した作品だといえます。
だからこそ【鋼鉄のピアニスト】たるギレリスとは、アンマッチな思いがするのですが、実際にここで聴く彼のピアノは、彼本来の厳しさと慈しみが極上の調和を見せている音楽なのです。
あいまいさや弱さは微塵も感じられないのに、すべてのフレーズはことごとくみずみずしい潤いに彩られ、味わいの深さはたとえようもありません。

ひるがえって29番の『ハンマークラヴィーア』は、ベートーヴェンに限らず、すべてのピアノソナタの歴史を紐解いてみても特別の地位を占める傑作であり、飛びぬけた大曲です。
これはギレリス最晩年の演奏なのですが、聴くほどに感銘を受ける、まさにベートーヴェンの奥義を極めた音楽家の手になる演奏で、知情意がパーフェクトなバランスを保って音楽に現れています。
きわめて高度のテクニックが、見せかけの効果やひけらかしには目もくれず、ベートーヴェンの音楽の偉大さにのみ奉仕することの意味を、我々に教えてくれるのです。
ここではギレリスの、飛びぬけてすぐれた技量が、大曲のそこかしこで、ベートーヴェンの意志の強靭さを際立たせる効果をあげています。
それがきわめて印象的で、あるいはこの録音こそ、偉大なピアニストが最晩年に到達しえた孤高の境地を端的に示すものかもしれません。
いうまでもなく、『ハンマークラヴィーア』は凡庸な弾き手には、音楽的な演奏をすることすら困難な難曲でありますが、ギレリスの超人的ともいえる(しかもストイックに抑制された)ピアニスティックな冴えは、むしろこの曲を、愉悦に充ちた表情で弾ききっています。
たとえば、瞑想的な美しさのアダージョのすばらしさは、筆舌に尽くしがたいものですし、深遠なラルゴは聴くものを深い沈黙と感銘にいざないます。

録音は、11年の年代の差を感じないほど自然なプレゼンスで、時代が変わろうとも一貫して揺るぎない、グラモフォンのポリシーを見る思いがします。

疑いなく偉大なピアニストであったギレリスの遺功を偲ぶものとして、またベートーヴェンのピアノソナタの演奏史上においても特筆すべき成果として、本アルバムを強力に推薦します。
898円というバーゲン・プライス中ですから、迷わずお買い求め下さい。

(録音 1972、1983年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★☆
2 録音 ★★★★
3 不朽 ★★★★
4 買得 ★★★★★
5 必須 ★★★★


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ベートーヴェン | コメント:2 | トラックバック:0 |

シベリウス 交響曲第4番〜第7番他 カラヤン指揮ベルリン・フィル


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カラヤンのシベリウス演奏は、作曲家のお墨付きです。
シベリウスは『私の作品を完璧に再現しうる指揮者は、カラヤンである』と語ったとされるほどで、その美しさ・荘厳さとも、無比の境地に達しています。驚異的といってもいいでしょう。

そうしたカラヤンのシベリウス録音中でも、最高の精華が、ここに聴く録音です。
中期以降の傑作交響曲4-7番と、交響詩『タピオラ』及び『トゥオネラの白鳥』、これらの録音は、発売当事、世界中のシベリウス愛好家から絶賛を浴びたものでした。
ドイツ・レコード賞をはじめ、数々の栄誉に輝いている、カラヤンの録音歴でも会心とされるもののひとつです。

ベルリンフィルの卓越無類の合奏力と、透きとおって冷たいほど美しい音色は、まさにシベリウスを演奏する為にこそあるような印象を与えます。
カラヤンの、無駄を省き透徹された美意識の玲瓏たる様子も、録音にはっきりと現れ、真空管最盛期の録音が、空気感も写しこむような冴えでそのサウンドをみずみずしく収録しています。

すべての作品ごとに印象を縷縷述べるのは避けますが、たとえば5番の、北欧の遅い春を祝福するような音楽が、天に散らされた銀糸のようにきらめいているのは、まさにこの録音でしか聴けないすばらしさです。
ここでのフィナーレの、あまりにも感動的な音楽は、カラヤン&ベルリンフィルの芸術的勝利といってよいほどのものです。
さらに『トゥオネラの白鳥』の幽玄霊妙な音楽は、こうした幻想的な作品を扱わせたら右に出る者のいなかったカラヤンの、真骨頂を見る思いがします。
また、単一楽章によって織られた第7番を、ここまで構築性堅固に(しかも最上の美しさを持たせて)描ききった演奏を、私は他に知りません。
この録音を聴くと、7番がただ安易なムード音楽的に演奏されがちな現状に、力強いアンチテーゼを突きつけられた思いがします。
傑作と呼びうるシベリウス最後のシンフォニーが、堂々たる内容を備えた豊かな音楽だと主張しているかのようで、それが感動をともなって再認識させられるのには、舌を巻くほかありません。
第6番の(あえてこのように言いますが)この世ならぬほどに精妙可憐な結実も、この時期のカラヤンとベルリンフィルにしか成し得なかった壮絶に美しい音楽です。
また問題作でもあり、疑う余地のない傑作である4番も、カラヤンの録音で聴くと、たちまちのうちに抜群の作品だと知らされますし、この難渋な音楽を、旨味を搾り取るかのように表現し尽くしているのは、さすがという以外にありません。

シベリウス・ファン、あるいはカラヤン・ファンにとって必携のアイテムですが、北欧の音楽にあまり縁のなかった方にもぜひお聴きいただきたい、珠玉の録音集であると考えます。
個人的にはカラヤンのあまたある録音中でも屈指の傑作であると位置付けています。
また、シベリウス作品の録音史中でも、けっして無視することのできない、一際めだった高峰といえるのではないでしょうか。

2枚組ながら、現在1370円というとてつもないバーゲン・プライス中ですから、ぜひともご入手ください。
アンチ・カラヤンの方がこれを聴いて、カラヤン・ファンに寝返るという現象が後を絶たないのも頷ける録音です。

(録音 1965、67年)

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1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★★☆
3 不朽 ★★★★★
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信州ビーナスラインの旅・とってもおススメの宿【信州車山高原 びすとろまほうの家】

車山山頂から


車山山頂から2


このGWに、信州(長野県)へ旅してきました。
そのときの写真です(車山山頂から)。
草津、軽井沢、車山・霧ヶ峰(高原)、松本、安曇野、白馬、糸魚川とまわってきました。
これは車山山頂からの写真です。
ビーナスラインを中心とした車山高原、霧ヶ峰高原は日本を代表する高原リゾートではないでしょうか。

ここにおススメの宿があります。

【信州車山高原 びすとろまほうの家】
http://www.lcv.ne.jp/~hozuki/

料理は絶品(量も質も最高です! デザートもすごく美味しい!!)ですし、ホスピタリティあふれる対応でとっても居心地の良い宿です。
クリンリネスもしっかりされていますし、静かでくつろげる、まさに大人の隠れ家という表現がぴったりです。

信州へ旅行される際には、ぜひ訪れてほしい、絶対のおススメです。

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ひとりごとや新潟市観光について | コメント:0 | トラックバック:0 |

ベートーヴェン 交響曲第5番、第7番 カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィル


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カラヤン祭のログでも何度か触れましたが、稀代のカリスマ指揮者カルロス・クライバーが、ベートーヴェンの交響曲で何度か名演を残しています。
それらはいずれも、好楽家にはたいへんな名盤として親しまれてきたものですし、じっさい、演奏内容の充実も、この指揮者ならではの凄みを感じさせるものです。
その絶大な人気に比して、わずかな(といってもいいでしょう)録音をしか残さなかったクライバーですが、ベートーヴェンに関しては比較的恵まれており、彼の生前より、4、5、7番の正規録音がリリースされていました。
このうち5番と7番を収めたのが、このディスクです(4番はライヴ録音であり、レーベルも違います)。
絶対の自信を持つ曲だけを録音したといわれるクライバーですから、ここでも超絶的な名演の記録となっているのは、いまさら私が説明するまでもないかもしれません。

第5番は元来、きわめて論理的でもありながら、反面、激情の塊のような音楽でもあります。
その解釈を、爆発的な音楽的跳躍と、ゴムマリのような弾性で表現し尽くしたのが、ここでのクライバーの演奏といえそうです。
どんなに些細なフレーズも疎かにしていないのに、聴きながら受ける印象はまさに疾風怒濤としかいえないのは、クライバーが生得している音楽性の豊かさならではといえるでしょう。
たとえば第四楽章の歓喜の音楽など、フルトヴェングラー以来の感動的な歌となっていると思えますし、その生々しい存在感は無類のものがあります。
この指揮者が持っている音楽的エネルギーの巨大さに圧倒される思いがするほどで、少なくともステレオ録音における、同曲の録音・演奏として最右翼の1枚であろうことは、疑う余地がありません。
こんな演奏から、クラシックを聴き始めてもらいたいと思いますし、何度聴きこんでも新鮮さを失わない、この作曲家と指揮者の無限の生命力には、畏怖の念すら感じるほどです。

併録された第7番も、未来永劫に渡って光を失わないと思わせる名演です。
ドラマ版『のだめカンタービレ』で、ガーシュウィンとともにメイン曲として使われ、一躍知られるようになった作品ですが、もとよりクラシック音楽愛好家には絶大な人気がありました。
種々の人気投票で、ブラームスの1番などと接戦を繰り広げたことが、人気を裏打ちしています。
後世の作曲家たちにも多大な影響を与えた作品で、ワーグナーがいみじくも【舞踏の神化】と呼んだ如く、全体を強靭なリズムが支配する異色の名曲です。
この作品から生じた影響が、たとえばロックンロールなどへも波及したといわれており、躍動感の塊のような音楽であって、まさにクライバーの踊るような指揮にふさわしいです。
特に第一楽章の4:20〜の部分で、有名な旋律を、うちふるえるような手つきで扱っているのが印象的です。
すばらしく透明な美しさを持ったアダージョも、決してムード的な音楽にしてしまわず、剛毅な一筆書きともいえる推進力を見せて描ききっていますし、それでいて音楽はすこしも柔軟性を失いません。
第3〜第4楽章は、踊りながら指揮するクライバーが見えるような名演で、とくに最終楽章は狂騒的とすらいえる一気呵成の芸術として完成させています。
実際のタイムはカラヤンのほうが速いにも関わらず、こちらをよりすさまじい勢いに感じるのも、クライバーの指揮の精髄といえそうです。
ここまですさまじい第7番は、卓絶した力を持っていたクライバーにしても会心の出来ばえであったことでしょう。
ウィーンフィルをここまで真剣にさせているのも、クライバーのカリスマという思いがします。

録音はアナログ完成期の素晴らしいレベルの高さで、デジタル時代になってから失われがちな、音楽の勢いを、ダイレクトにキャッチしている印象があって見事です。
価格もきわめて廉価(898円?!)ですから、これらの名曲の最高の名演として、強力に推薦したく思います。

(録音 1974、76年)

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