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ドヴォルザーク 交響曲第8番、第9番『新世界より』 クーベリック指揮ベルリンフィル


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屈指の人気交響曲であるドヴォルザークの第9番『新世界より』と、内容的にはそれを上回るとも思える第8番をおさめたCDです。

指揮者はチェコの名匠ラファエル・クーベリック。
祖国チェコ(当時、チェコスロヴァキア)の共産化に反発し、西側へ亡命して、旺盛な音楽活動を繰り広げました。
この名指揮者の活躍の舞台は、アメリカのシカゴ交響楽団、英国のコヴェント・ガーデン王立歌劇場、ドイツ・ミュンヘンのバイエルン放送交響楽団などですが、とくにバイエルン放送響とは、稀有の名演を披露し、国際的にトップ・キャリアといえる活躍をしたものでした。
いかにもチェコ出身の人らしく、ドヴォルザークやマーラーを大の得意としながら、ベートーヴェン、ブラームス、モーツァルト等にも類まれな手腕を発揮して、音楽愛好家にとって、たとえばカラヤンやバーンスタインと比較すればやや目立たない存在ながら、その音楽性では、決して劣らないどころか、ときには彼らスター指揮者を凌駕するような名演を実現していました。
彼自身作曲家でもあり、また父は当時のトップ・ヴァイオリニストだったヤン・クーベリックでもあり、いかにも中欧の貴族的な趣味のよさと、穏当な中にも鉄の炎のような情熱を感じさせる、りりしい指揮ぶりは、今なおファンを増やし続けています。

クーベリックは1966年から1972年にかけて、祖国チェコの作曲家、ドボルザークの交響曲全集を、ベルリンフィルと録音したのですが、これはそのなかから、代表的な二曲をとったものです。

有名な『新世界から』は、ニューヨーク・ナショナル音楽院の音楽院院長職に就任し、異国の地で、祖国チェコ(ボヘミア)を思う心情が反映された名曲といわれております。
たとえば有名な、第二楽章ラルゴ(『家路』の名前で日本でも良く知られています)の郷愁を感じさせる旋律は、彼のホームシックの強いあらわれだといいます。
そうしたいわば、メランコラリックなセクションを、クーベリックは、彼らしい繊細かつ清潔な手つきで扱っており、曲本来の持っている叙情を、いささかも損なうことなく、まことに美しい音楽としていることには驚嘆させられます。たおやかな旋律は、必要以上の強調をされず、とても清新でありつつ、心の奥深くに届くような感動的なものです。
ひるがえって悲劇的様相を持っている第一、第四楽章は、凡庸な指揮者ならば煽り立てすぎたうえで、音楽を暴力的にしてしまうところですが(実際そうした演奏が、いかに多いことでしょうか)、ここでのクーベリックは、節度を持ちつつもしなやかで強靭な音楽としており、ここぞというときの爆発力も、超一流オーケストラと指揮者の底力を存分に発揮していて素晴らしいものです。
ヒステリックになってしまいがちな第四楽章も、見事な均整を保ち、楽器のパートをどれひとつとして突出させることなく音楽を進行させています。
そう書くとまるでクールな演奏に思えますが、実際にはこれほど【熱い】音楽もそうなく、まさにクーベリックの、彼自身が故郷を思う心と、ドヴォルザークのそれとが一体となって、聴き手に迫ってくるようで、涙を禁じえません。
華やかな音楽書法で書かれたこの曲を、まるでオーケストラのショウ・ピースのように演奏する指揮者があとを絶たない中、クーベリックがこの曲に託している共感は、次元の違う素晴らしさだと思えるほどです。

第8番はもっともボヘミア的な内容を持つといわれる名曲です。
にぎやかな朝を思わせる第一楽章(にぎやかな音もさることながら、消え入るような弱音の美しさは、さすがクーベリックです)、草原に寝転んで見た、雲のきれはしにのぞく青空のはかなさを音にしたような第二楽章。
第9番のラルゴに匹敵する、印象的なメロディを持った第三楽章は、けっして女々しくならず、あくまで清潔で伸びやかな歌心で奏され、いさぎよいテンポで歌いきられている様子は、かえって曲本来の魅力を浮き彫りにしているようです。
私がとても愛している第四楽章は、どんな大河小説のあとに聴こうか迷ってしまうような音楽で、すべての良い時代と幸不幸の出来事をふりかえりつつ、陳腐な言い方ですが走馬灯のようによぎってゆく様子が、つよい印象を胸に残します。

第8番は第9番以上の名作だと私は思うのですが、それもクーベリックの演奏あってのことといえるかもしれません。
この名指揮者らしいとてもなめらかな音の移行、郷里の作曲家の傑作を完全に再現しようという意思、どんな激しいフレーズでもけっして下品にならない、ほとんど奇跡的なバランス感覚は、やや聴き慣れてしまった感のあるこれらの傑作を、いまでも新鮮な感動とともに聴かせてくれるほとんど唯一の録音なのです。
結論めいたことを書きますと、アナログ最盛期の録音の素晴らしさもあって、これらの傑作交響曲の究極の名演といえると思います。

(録音 1966、1972年)

DISC Recommend
1 演奏 ★★★★★
2 録音 ★★★★
3 不朽 ★★★★★
4 買得 ★★★★
5 必須 ★★★★★


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